安定のための基本条件
そのためには、インプラント手術の際に、インプラントと骨の結合「オッセオインテグレーション」が100%達成されることが条件となり、これがインプラント手術における最初で最大の目的だと言えます。
そのためには、抜歯をしてできた穴の表面が「皮質骨」という硬い骨で覆われ、そこにインプラントを正確に埋入することがとても重要になってきます。
もちろん、それをしたからといってインプラントがダメになる、ということではありません。ですが、その結果というのは7年以上の月日が経たないと、患者様にはわからないことなのです。
当院では、患者様のご希望(歯を早く入れたい、治療費を抑えたい、など)を尊重し、可能な限り実現させていただく方向で進めてまいります。
ですが、インプラントを20年、30年と、長期安定させることが最も重要ですので、そのためには、十分な条件が整うまで、骨の治癒期間を待つ場合もありますので、その点はご理解のほどよろしくお願いいたします。
インプラントを長く安定させるための条件
抜歯後6ヶ月待ってからインプラントを行う
そのため、当院では抜歯後6ヶ月待ってからインプラントの埋め込みを行うことをおすすめしています。
抜歯即時インプラントは適応症をよく見極める
骨移植は体に負担がかかると知った上で行う
ですが、インプラントの寿命が短くなるかどうかは、手術後にはわからず、7年~10年以上経たないとわかりません。
抜歯即時インプラントの際に、自分の骨を別場所から採取してインプラントと骨の隙間に埋める「自家骨移植」という方法もありますが、この方法は、他の場所の骨を削らなければならず、お体への負担が大きいことを知っておく必要があります。
当院では、インプラントを30年持たせることを目標とするためには、抜歯後半年待って、骨が十分に治ってから行うインプラント方法が、お体への負担が最小限で、かつ確実な方法であると考え、おすすめしております。(実際に30年持つかどうか、というのは、患者様の年齢や状況にもよっても違ってきます)
ただし、事情により、早く歯を入れたい、すぐに咬みたいというご希望をお持ちの方で、抜歯即時インプラントや、インプラント埋入即時加重(インプラント手術日に仮の歯が入る治療法)をご希望の場合には、お気軽にご相談ください。
フラップレスインプラント手術はインプラントの寿命に悪影響を及ぼす手術法です。当医院では、故にその手術法は採用していません。
フラップレスインプラント手術は歯肉を切開しないでインプラントを入れる為の場所の歯肉をパンチして骨まで開く丸い穴を歯肉に開け、そこからドリルでインプラント入れる為の骨の形成(穴を掘る)をして、インプラントを埋入する手術法です。
確かにフラップレスインプラント手術は歯ぐきを切開して開かないのでその分の外科的侵襲度は少なくて済みますし、術後の縫合も無いから、痛みも少なく、オペ時間も大幅に少なくてよいし、出血や腫れも少ないです。
しかし、良い事ばかりではありません。
【1】フラップレス手術の良い点は
(1)痛みが少ない(2)オペ時間が短く出来る
(3)出血、腫れが少ない
(4)治癒が早い
【2】フラップレス手術の欠点は
(1)インプラントの方向が骨に対して判断がしにくいので、怖いので安全の為に本来入れられる長さよりも短めのインプラントを入れざるを得ない。短いインプラントだから、当然寿命も短くなります。
(2)インプスラントの方向も適切に埋入しにくい。インプラント埋入の方向はインプラント寿命に大きく関係します。
(3)CT画像では正確な骨形態は実際歯肉を開けないと判りません。インプラントを埋入する部位の骨は凸凹の場合も多いので開いて骨の表面を平坦にして埋入する事はインプラントの寿命に大きく関係します。
フラップレスではその事が出来ません。
(4)インプラントの骨内に入れるべきラフサーフェース面(チタン合金が凸凹に出来ている面)を適正に骨内に入れる処理がフラップレス手術では出来ないので、もし歯ぐき内にそのラフサーフェースが露出していると、とても感染し易い状況になりインプラントの歯周病になるリスクがとても高くなります。
(5)骨を削る時に摩擦熱を出来るだけ無くし骨の火傷しない様にするために、ドリルや骨に開けた穴の骨面を冷却した生理的食塩水で冷却が必要なのですが、フラップレス手術ではそれが歯肉に覆われたままなので、充分に冷却は出来ないので、骨の火傷になるリスクがとても高いのです。
もし火傷すると骨の表面やドリルで掘った穴の中の骨面の骨細胞が死にインプラントの早期脱落の大きな原因となりますし、当然インプラントの寿命も短くなります。
患者様方は長期に持つ安全な、歯ぐきを開いてする通常のインプラント手術をするか、それとも時間が早く外科的侵襲度が少ない、しかしインプラントの早期脱落や寿命が短くなるリスクのとても高いフラップレス手術を選ぶかは患者様の選択権です。
もしフラップレス手術のご希望があれば当然当院でも簡単に出来ます。通常の切開して骨面を出してする手術法でも1本30分位です。フラップレス手術なら10分もあれば十分です。
どちらでも対応可能です。
フラップレスインプラント手術はとてもお勧めはできません!!!
歯茎を開いて行うインプラント手術が最も確実
また、歯茎の厚みも場所によって異なりますし、ガイドとなるマウスピースのような装置も人の手によって製作されるため、誤差が出てしまい、結果的にインプラントの方向や埋め込む深さが予定と違ってくるリスクがあります。
そのため、最も正確で安全に手術を行うには、やはり、豊富な経験と技術を持った歯科医師が、歯茎を開いて、骨を露出させて行う通常のインプラント手術が最も確実です。
ですが、デジタル技術を使ったインプラント埋め込み手術は改良、進歩していますので、今後の進歩状況でどのような結果になっていくか、エビデンスを待ちたいと思います。
骨密度が低い場合は通常の手術方法で行う
手術時間を可能な限り最小限にする
手術時に骨が空気に露出している時間が長いと、骨がダメージを受け、インプラントの長期安定にも悪影響を及ぼします。そのため、インプラントを1本埋め込む時間は30分程度と、迅速に行うことが大事です。
噛み合わせの力をかけすぎないようにする
インプラントに無理な力がかかると、いずれ、インプラント周囲の骨が失われ、脱落する原因になるからです。
そのためには、被せ物の材料の選択が重要となり、硬すぎないものを選ぶこと、具体的には、天然歯のエナメル質と同等の硬さを持つ、セラミック、ハイブリッドセラミック、金合金(白金加金や18K金合金)が向いていると言えるでしょう。
特に金合金は割れない、壊れないのに加え、噛み合わせの馴染みが良く、材質としても安定しており、とても優れています。ただし、色に関しては、金色なので、審美面には注意が必要です。
インプラントと噛み合う歯の金属が、硬い保険の金属である場合、インプラントに被せる素材と同じものに変更することも必要になってきます。
また、奥歯にインプラントを入れた場合、夜間に歯ぎしり防止のマウスピースを入れることは、インプラントに過剰な力がかからないようにするために欠かせません。
熟練した技術の高い歯科医師が手術を行う
ただし、今後、長期的には新たなデジタル技術が進み、いずれ、精度に優れたインプラント手術が可能になるかもしれません。
インプラントを無理のない本数で入れること
たとえば、骨密度が低い高齢の女性においては、骨密度を上げながらインプラント本数を増やす、もしくは、骨の高さや幅があまりない場合には、その状態に適した本数で入れることが、長期的に安定するインプラントのために必要になってきます。
たしかに、少ない本数で入れれば治療費は安くなります。ですが、無理な本数で入れてしまうと、その時は安く済んだとしても、結局長持ちしないので、結果的には高くつくことになってしまいます。
上顎でのオールオン4は米国では一切行われていませんし、私がインプラントを勉強した米国ハーバード大学歯学部では、上顎では最低8本、下顎では6本が世界の500症例の分析で一番長期間持つとの結論が出ています。
このように、上顎は8本、下顎では6本が長期で安定するインプラントの最低本数です。
下顎は、オールオン4でも骨密度に問題がないなら大丈夫です。上顎は骨密度が下顎の半分ぐらいなので、オールオン4には適していません。
インプラント以外の歯や被せ物を良い状態にしておくこと
定期検診とクリーニングを欠かさないこと
歯を保護するマウスピースを入れること
噛み合う歯の被せ物がインプラントの被せ物と同じであること
そのためには、インプラント周囲の感染防止と同時に、インプラントにかかる力のコントロールが大事になってきます。
インプラントに過度の力がかからないようにするためには、噛み合う歯の硬さがインプラントの被せ物と同じで、かつ、天然歯の硬さに近いことが全体の噛み合わせバランスを考えても理想的です。
歯並び・噛み合わせの高さを整えておくこと
歯を失ったまま放置すると、歯並びや噛み合わせが乱れてしまいますが、そのままでインプラントやブリッジを入れてしまった場合、噛み合わせの力が特定の歯に集中し、その不均衡を避けようと脳が指令して噛む筋肉に負担がかかり、顎関節症(口を開けると痛い、顎関節から雑音がする、口が開きづらい、など)を起こすことがあります。
そのため、インプラントを入れる前には、歯並びや噛み合わせを修正しておく必要があります。